雨だの風だので桜は入学式の後、あっという間に散った。
「だからおれは今年の桜をロクに見てないんだよ」
 ちょうど花盛りに入院していた少年が言った。
「自業自得だね。来年は精々気をつけな」
 パンに齧り付きながら幼馴染が言った。
「足骨折だっけ? もう体育できるなんてバカは身体の造りから違うんだな」
 ストローをくわえながら眼鏡の少年が言った。
「バカ言うな! おれの成績も知らないくせに!」
「知りたくもないわ。で、実際どうなの」
「ここに居ることが奇跡だよ」
 はん、と鼻で笑う二人にもう一人は激昂した。
「おまえらなああ!! おれをコケにして楽しいかッ」
 少年と少女は頷いた。
「「うん、まあまあ」」
 あんまりな返答に机の上に突っ伏した。
「あらまあ息もぴったりなことで……。いつの間にそんな仲良くなったんだよ」
 ぐじぐじと恨み言を言ったら、
「まあ同じクラスですから。ねえ初井さん」
「もう名前でいいって言ってるでしょミチヒロくん」
 ウフフフフ、アハハハハって感じで笑ういじめっ子達。
(こんなはずでは……)
 春花と同じ高校に入学して、うきうきスクール・ライフを送るはずだったのに。突然出て来てびっくりさせてさ、告白とかしちゃったりさ。それが自転車がいきなりぶっ壊れたばっかりに……! 満開の桜と共に始まるはずだった人生の春はちょっと目を離した隙にああどこへ。
 おれの春は、春は、春は







春はどこだ










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